〜ライオンとシマウマから学ぶこと〜
体重管理や食生活の改善について、私が患者さんにお話しするとき、いつもお伝えしている考え方があります。
それは、「まず人間を自然の中の動物として捉え直してみる」という視点です。
心房細動や動悸などの不整脈の診療をしていると、食生活や体重管理が症状や治療結果に大きく関係していることを日々実感します。
その意味でも、食生活を見直すことは不整脈と向き合ううえで重要なテーマです。
自然界では「いつでも食べられる」は前提ではない
例えばライオンを思い浮かべてみてください。
ライオンは獲物を探して歩き回り、シマウマも彼らに会ったら必死に逃げます。
そう簡単に食べられるわけにはいきません。
自然会では多分飽食な動物はいないと思います。
食べられない時間があることを前提に生きています。
そのため動物の体には、いわば「飢餓モード」ともいえる仕組みが備わっています。
血糖を維持する仕組みがいくつも用意されており、食べられない時間があっても生き延びられるように設計されているのです。

食べ過ぎるのは、人間だけの特殊な環境
一方で、我々人間は飽食系です。その昔飽食の時代という本もございました。
私はこれはエジソンのせいだと思っています(!)。電気が普及し、夜でも活動できるようになった。
結果、夜も仕事ができ、人と会え、食事もできるようになった。
結果、夕食は本来の「栄養補給」のため、からエンターテイメントの側面を強めていきました。
豪華な食事、会話、お酒、雰囲気。私はそれ自体を否定するつもりはありません。
ライオンだっておなかいっぱい食べる日があるんですから。
ただし頻度は多くなくてよい。体に負担をかけない内容であることが大切です。
体重増加や肥満は、高血圧や糖尿病だけでなく、心房細動を誘発する重要なリスクファクターであることが分かっています。
一般論としては薬物治療やカテーテル治療が中心になりますが、実臨床では体重管理が治療結果に大きく影響するケースを多く経験します。
心房細動に対してカテーテルアブレーション治療を行った後でも、肥満が改善しない場合には再発率が高くなることが知られています。
食生活の見直しは、不整脈治療の一部でもあるのです。
正しい食事は「理屈」ではなく「結果」で決める
適切な食生活とは何か、と質問れることがあります。
私の答えはシンプルです。医者ではなく「自分の体に聞く」ことです。
世の中には炭水化物ダイエットなど、さまざまな健康情報があります。
しかし人間の体の仕組みは非常に複雑で、まだ分かっていないことも多く、ある意味ブラックボックスです。
全員が全員に合うわけではありません。いろいろ実験してみるんです。
その結果2か月で1kg体重が減っていれば、そのやり方は成功です。
一方どんなに理屈が立派でも、減らなければその方法は合っていない。
自分の体が出した結果が最も信頼できます。

多くの人は、もう答えを知っている
多くの方は、自分の食生活のどこが良くないかをすでに自覚しています。ただ忙しいのです。
仕事や子育てなどで、分かっていてもできないだけというケースがほとんどです。
ゆえに私は、細かな食事制限、というよりは、こうした背景や考え方をお話しご自身の方法で取り組むきっかけを提案できればと願っています。
まとめ
自然界では基本、おなかをすかしていることが前提として設計されています。
しかし人間は文明の発展によって、とくに夕食を栄養補給というよりエンターテイメントの方面にかえていきました。
自分に適した食事療法を探すうえでこのような原則をイメージしていただきたいと思っています。
自然のリズムを少し思い出しながら、自分の体と対話していくことが、心臓と体を守ることにつながると私は考えています。
心房細動や動悸などの不整脈のコントロールには食生活や体重管理も重要です。
気になる症状がある場合には、専門医にご相談ください。
【執筆】井上健司
東京ハートリズムクリニック新宿 院長
[専門領域]
・虚血性心疾患
・総合内科専門医・指導医
・日本循環器学会専門医
・心血管カテーテル治療認定医
体重管理は、不整脈治療の一部だと私は考えています。
無理な食事制限ではなく、続けられる生活習慣を見つけることが大切です。

