「何も感じない心房細動」は、決して珍しくない
心房細動というと、動悸や息切れ、胸の不快感といった症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には、まったく症状を感じない心房細動も少なくありません。
最新のシステマティックレビューおよびメタアナリシスによれば、全心房細動患者の約27%(95%信頼区間22〜33%)が無症状であると報告されています (#1)。
さらに、他の大規模レビューや疫学研究でも、心房細動患者の10〜40%が無症状であるとされています (#2)。
つまり、心房細動は「症状が出て初めて気づく病気」ではなく、健診の心電図や、別の病気で受診した際に偶然見つかることも多い病気です。
症状がないこと自体は珍しいことではなく、むしろ一定の割合で存在する、心房細動の一つの顔といえます。

心房細動の症状がない=リスクが低い、ではない
ここで多くの方が疑問に思うのが、「症状がないなら、治療しなくてもいいのでは?」という点です。
しかし、心房細動の危険性は、症状の強さとは必ずしも一致しません。
脳梗塞のリスクを左右するのは、年齢、高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞の既往といった背景因子であり、動悸があるかどうかではありません。
症状がなくても、心房細動によって心房の血流がよどみ、左心耳に血栓ができる条件は同じように進行します。
実際、無症候性の心房細動は発見が遅れやすく、気づいたときには脳梗塞を起こして初めて診断される、というケースも少なくありません。
「症状がない」ということは、安全であることを意味するのではなく、むしろ見逃されやすい、という側面を持っています。
「今困っていないから」ではなく、「将来困らないため」の治療
心房細動の治療の目的は、今ある症状を和らげることだけではありません。
むしろ重要なのは、将来起こり得る脳梗塞や心不全を防ぐことです。
無症候性の場合、「薬を飲むほどではないのでは」「治療のメリットが実感できない」と感じるのは自然なことです。
しかし、抗凝固療法やリズム・レートコントロール、さらにはカテーテルアブレーションといった治療は、症状の有無に関係なく、将来のリスクを下げるために検討されます。
治療が必要かどうかは、「つらさ」ではなく、「リスク」で判断します。
そのリスクは、人それぞれ異なります。だからこそ、無症状だから放置するのではなく、自分のリスクを正しく知り、どの段階で、どの治療が適切なのかを一緒に考えることが大切です。
東京ハートリズムクリニック新宿では、どういうリスクがあるのか、治療が必要なのか、どういう治療があるのか、あなたに合わせてお話します。
気になる方はぜひご相談ください。

次回は、無症候性心房細動であっても、どのような場合に治療を考えるべきなのか、その判断の目安について、もう少し具体的に整理していきます。
参考文献
- Prevalence of Asymptomatic Atrial Fibrillation and Risk Factors Associated With Asymptomatic Status: A Systematic Review and Meta-Analysis.European Journal of Preventive Cardiology. 2025. Pamporis K, Karakasis P, Sagris M, et al.New
- Atrial Fibrillation: A Review. The Journal of the American Medical Association. 2025. Ko D, Chung MK, Evans PT, Benjamin EJ, Helm RH.New

