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第4部 発作性上室性頻拍症

第4部 発作性上室性頻拍症

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4-1 発作性上室性頻拍症の種類

発作性上室性頻拍症とは

規則正しく速い脈(100~200拍/分)を呈する不整脈です。発作中、心臓の中で電気は上室(心房)から心室に流れていきます。

ほとんどの人は動悸症状を自覚し、脈拍が速いと血圧が低下(60~80mmHg)するので、めまい、ふらつきも認めます。発作時の心電図をとることで、診断がつきますが、発作時間が短いと、心電図を記録できず、なかなか確定診断に至らない人もいます。

発作性上室性頻拍症は、メカニズムの点からの以下の3つがあり、それぞれについて別項で説明します。

  1. 房室結節リエントリー性頻拍
  2. 副伝導路症候群
  3. 心房頻拍

発作性上室性頻拍症にしめるそれぞれの割合は1.房室結節リエントリー性頻拍が50%、2.副伝導路症候群が40%、3.心房頻拍が10%です。

発作性上室性頻拍症 3つのメカニズム解説図

4-2 房室結節リエントリー性頻拍

発症のメカニズム

房室結節内もしくはその近くに、電気の伝導する速度が異なる通り道が少なくとも2つ(速伝導路と遅伝導路)できてしまい、電気がこれらの通り道をグルグル回ることにより不整脈が発症します。このグルグル回ることをリエントリーと呼んでいます。

疫学

発作性上室性頻拍症の中で最も頻度が多く(60%)、男性よりも女性の方が多いです。

発症年齢

いかなる年齢でも起こり得ます。平均発症年齢は32歳で2/3は20歳を超えて発症します。

症状

突然、発症する動悸、目眩、息切れ、胸痛、失神等です。突然発症というのが症状の特徴で、スイッチが入った様に動悸が始まり、スイッチを切った様に動悸が治まります。この不整脈は、他の発作性上室性頻拍症と異なり、心房と心室が同時に興奮します。三尖弁が閉じている時に、心房が興奮するので、心房興奮によって生じた血流が頸部の静脈に反射し、頸部がドクンドクンと大きく拍動するのを感じます。命に関わるような不整脈ではありませんが、発作時の症状が強いのもこの不整脈の特徴です。

診断

発作時の心電図をとれば診断可能です。しかし、症状の持続時間が短いと、その間の心電図を記録できずに、正確な診断に中々至らない患者さんもいます。心電図記録がなくても、特徴的な症状より、不整脈発作が強く疑われた場合は、カテーテル室で誘発試験を行い、診断を確定する場合もあります。

治療

バルサルバ手技 仰向けになり息を大きく吸い込んだ後に、10~15秒間、顔が真っ赤になるまで、力みながら息をこらえます。強く息ごらえをすると、一過性に血圧が低下します。それを解除した後に、血圧が上昇します。その際、心拍が遅くなり発作が停止します。座りながらやってもほとんど効果はありません。横になってやるのがこつです。また、協力者がいるようならば、息ごらえを解除すると同時に、下肢を挙上してもらうと、不整脈発作は更に停止しやすくなります。このバルサルバ手技で10~40%の患者さんは発作を停止可能です。

電気ショック 血圧が下がり、症状が強く、薬が無効の場合には、電気ショック治療を行うことがあります。しかし、非常に稀なことです。

薬物治療

ベラパミル(商品名ワソラン)、アデホスを使用します。アデホスは血管拡張薬ですので、注射されると体全身がカーッと熱くなるような感じを10秒程度自覚しますが、速効性があり、不整脈はすぐに止まります。気管支喘息の患者さんには使えません。

カテーテルアブレーション

治療成功率は95〜98%です。カテーテルアブレーションによる焼灼部位は房室結節の約1cm下方にある遅伝導路というところです。主な合併症は完全房室ブロックで、約1%の頻度で起きると報告されています。完全房室ブロックでは、心房の興奮が心室に伝わらなくなり、10〜30拍/分程度の徐脈や、一時的(5〜10秒)な心停止を来します。この合併症が起きやすい人は、高齢者と元来1度房室ブロックがある人です。その方々は心房と心室の電気的な連結が弱く、遅伝導路を焼灼することでその連結が更に弱くなり、術中もしくは、術後しばらくたって(術当日の就寝時等)、完全房室ブロックが発生します。完全房室ブロックは、失神や心不全の原因となるので、恒久的ペースメーカー治療が必要となります。

当院でのアブレーションの特徴は、3Dシステムを用いているということです。(下図)このシステムを使用することにより、治療確実性と安全性が飛躍的に向上しました。アブレーションカテーテルの先端が、房室結節という正常の伝導路からどの程度離れていて、アブレーションカテーテル先端の心筋にかかる力がどの程度で、どちらに向いているのかというのが分かるからです。

問題はメカニズムが不明なことです。アブレーションで遅伝導を焼灼しても、術中に発作が誘発され続ける患者さんがいます。そういう時には、無理をしないようにしています。今まで、10例以上その様な症例を経験していますが、一人を除いて、術後に発作は起きていません。つまり、根治しているといことです。

房室結節リエントリー性頻拍症のアブレーション

黄色がヒス束電位記録部位(正常の電気の通り道)白色が遅伝導路焼灼部位です。両者の位置を3次元で確認することで、治療の確実性、安全性は飛躍的に高まりました。

ヒス束電位記録部位と遅伝導路焼灼部位の解説図

4-3 副伝導路症候群(WPW症候群)

発症のメカニズム

心房と心室の間に副伝導路(図1)が存在することです。母親のおなかにいる時に、一つの塊であった心臓は線維性の膜で完全に2つに分離され心房と心室になりますが、その一部で分離されずに心房と心室がくっついたままのところができてしまうことがあります。その部分が副伝導路です。その副伝導路を経由して、心室の電気的興奮が心房に伝わり、更に心房→心室→心房→心室という電気の旋回路を作り、頻拍発作が起こります(図2)。

副伝導路には心房から心室のみに電気が流れるもの、その逆のもの、そして両方向性に流れるものと3種類あります。洞調律時(正常の心拍時)に心房から心室に電気が流れると、それが心電図に現れ、WPW型心電図と言われます。心室から心房にのみに電気が流れるものは、洞調律時の心電図ではその伝導の様子は分かりません。

副伝導路症候群の発症メカニズム 心房と心室の間に通る副伝導路
図1
副伝導路症候群の発症メカニズム 心室から心房への電気的興奮の旋回路
図2

疫学

WPW型心電図(副伝導路を経由する電気のながれが、平常時の心電図で明らかなもの)をもち、なおかつ、発作性上室性頻拍症にまでいたるのは全人口の0.07%と報告されています。

発症年齢

先天的なものなので何歳でも起こりえます。

症状

突然始まり、突然終わる、規則正しい頻拍発作です。

診断

発作中の心電図をとることで、発作性上室性頻拍症という診断がつきます。しかし、その中で、房室結節リエントリー性頻拍なのか、副伝導路症候群なのか、心房頻拍なのかは、カテーテルを使用した電気的生理検査を行わなければ分かりません。

治療

バルサルバ手技 房室結節リエントリー性頻拍のところで記載したバルサルバ手技が発作停止に有効な人もいます。

電気ショック 血圧が下がり、症状が強く、薬が無効の場合には、電気ショック治療を行うことがあります。しかし、非常に稀なことです。

薬物治療

ベラパミル(商品名ワソラン)、アデホス、抗不整脈薬を静脈注射します。多くの方は、ベラパミル、アデホスで発作は停止します。しかし、発作を頻回に繰り返している人は、この2剤では、一時的に発作が停止するものの、すぐに(数秒)発作が再発するようになります。その際には、抗不整脈薬の投与が必要です。

カテーテルアブレーション

発作を頻回に繰り返している人が適応となります。当院でのアブレーションの特徴は、3Dシステムを用いているということです(図3)。このシステムを使用することにより、治療確実性と安全性が飛躍的に向上しました。副伝導路の位置を3次元的に捕捉可能で、アブレーションカテーテルの先端がどの程度の力で、副伝導路に当たっているかが分かり、焼灼効果を確実にすることができます。

右心房(右斜位像)の資料画像

4-4 心房頻拍

発症のメカニズム

心房のある一箇所に速い頻度(100拍/分以上)で興奮する心筋ができて発症します。そこを中心に電気的興奮が心房内で広がっていきます。

疫学

頻度は多いものではなく治療を要する発作性上室性頻拍症の約1割の方が心房頻拍です。

発症年齢

何歳でも発症し得ます。

症状

動悸です。発症の仕方は「突然始まり、突然終わる」、「徐々に始まり、徐々に終わる」と様々です。

診断

発作時の心電図をとることで診断がつきます。

治療

バルサルバ手技(房室結節リエントリー性頻拍のページ参照) 一部の人には有効ですが、無効のことが多いです。

電気ショック 一部の人には有効です。しかし、電気ショックで一時的に停止しても、すぐに再発することがあります。

薬物治療:

βブロッカー(メインテート、テノーミン)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)、ベラパミル(ワソラン)、抗不整脈薬が有効です。

カテーテルアブレーション

カルトシステムとペンタレイカテーテルを用いて、心房頻拍中の心臓内の電気の興奮の様子を観察します。心房頻拍は図のように、一箇所から周囲の心筋に電気が広がりながら興奮していきます。その中心となるところを焼灼すると心房頻拍は停止します。

右心房(後面像)の資料画像

心房頻拍中のカルト画像 左:右心房(右斜位像)、右:右心房(後面像)。心房頻拍の発生源は右心房のクリスタターミナリスというところの下方にありました。高周波通電(赤で示したところで実施)で頻拍は停止しています。

【執筆】桑原大志 医師・医学博士
東京ハートリズムクリニック院長
日本不整脈心電学会認定不整脈専門医