第3部 発作性上室性頻拍症

第2章 房室結節リエントリー性頻拍

第2章 房室結節リエントリー性頻拍

発症のメカニズム

房室結節内もしくはその近くに、電気の伝導する速度が異なる通り道が少なくとも2つ(速伝導路と遅伝導路)できてしまい、電気がこれらの通り道をグルグル回ることにより不整脈が発症します。このグルグル回ることをリエントリーと呼んでいます。

疫学

発作性上室性頻拍症の中で最も頻度が多く(60%)、男性よりも女性の方が多いです。

発症年齢

いかなる年齢でも起こり得ます。平均発症年齢は32歳で2/3は20歳を超えて発症します。

症状

突然、発症する動悸、目眩、息切れ、胸痛、失神等です。突然発症というのが症状の特徴で、スイッチが入った様に動悸が始まり、スイッチを切った様に動悸が治まります。この不整脈は、他の発作性上室性頻拍症と異なり、心房と心室が同時に興奮します。三尖弁が閉じている時に、心房が興奮するので、心房興奮によって生じた血流が頸部の静脈に反射し、頸部がドクンドクンと大きく拍動するのを感じます。命に関わるような不整脈ではありませんが、発作時の症状が強いのもこの不整脈の特徴です。

診断

発作時の心電図をとれば診断可能です。しかし、症状の持続時間が短いと、その間の心電図を記録できずに、正確な診断に中々至らない患者さんもいます。心電図記録がなくても、特徴的な症状より、不整脈発作が強く疑われた場合は、カテーテル室で誘発試験を行い、診断を確定する場合もあります。

治療

バルサルバ手技 仰向けになり息を大きく吸い込んだ後に、10~15秒間、顔が真っ赤になるまで、力みながら息をこらえます。強く息ごらえをすると、一過性に血圧が低下します。それを解除した後に、血圧が上昇します。その際、心拍が遅くなり発作が停止します。座りながらやってもほとんど効果はありません。横になってやるのがこつです。また、協力者がいるようならば、息ごらえを解除すると同時に、下肢を挙上してもらうと、不整脈発作は更に停止しやすくなります。このバルサルバ手技で10~40%の患者さんは発作を停止可能です。

電気ショック 血圧が下がり、症状が強く、薬が無効の場合には、電気ショック治療を行うことがあります。しかし、非常に稀なことです。

薬物治療

ベラパミル(商品名ワソラン)、アデホスを使用します。アデホスは血管拡張薬ですので、注射されると体全身がカーッと熱くなるような感じを10秒程度自覚しますが、速効性があり、不整脈はすぐに止まります。気管支喘息の患者さんには使えません。

カテーテルアブレーション

治療成功率は95〜98%です。カテーテルアブレーションによる焼灼部位は房室結節の約1cm下方にある遅伝導路というところです。主な合併症は完全房室ブロックで、約1%の頻度で起きると報告されています。完全房室ブロックでは、心房の興奮が心室に伝わらなくなり、10〜30拍/分程度の徐脈や、一時的(5〜10秒)な心停止を来します。この合併症が起きやすい人は、高齢者と元来1度房室ブロックがある人です。その方々は心房と心室の電気的な連結が弱く、遅伝導路を焼灼することでその連結が更に弱くなり、術中もしくは、術後しばらくたって(術当日の就寝時等)、完全房室ブロックが発生します。完全房室ブロックは、失神や心不全の原因となるので、恒久的ペースメーカー治療が必要となります。

当院でのアブレーションの特徴は、3Dシステムを用いているということです。(下図)このシステムを使用することにより、治療確実性と安全性が飛躍的に向上しました。アブレーションカテーテルの先端が、房室結節という正常の伝導路からどの程度離れていて、アブレーションカテーテル先端の心筋にかかる力がどの程度で、どちらに向いているのかというのが分かるからです。

問題はメカニズムが不明なことです。アブレーションで遅伝導を焼灼しても、術中に発作が誘発され続ける患者さんがいます。そういう時には、無理をしないようにしています。今まで、10例以上その様な症例を経験していますが、一人を除いて、術後に発作は起きていません。つまり、根治しているといことです。

房室結節リエントリー性頻拍症のアブレーション

黄色がヒス束電位記録部位(正常の電気の通り道)白色が遅伝導路焼灼部位です。両者の位置を3次元で確認することで、治療の確実性、安全性は飛躍的に高まりました。

図1

0363710700

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