― “脈”と“心電図”の違いを解説 ―
最近、Apple Watch などのスマートウォッチから「心房細動の可能性があります」
と通知され、不安になって受診される方が増えています。
一方で、「そもそもなんで不整脈っていえる?」と疑問に感じる方も多いと思います。
今回は、Apple Watch がどのように不整脈を検出しているのかを、循環器専門医の立場からわかりやすく解説します。
Apple Watch は主に2つの仕組みで不整脈を見ている
Apple Watch は、主に以下の2つを組み合わせて不整脈を検出しています。
- 光学式脈波センサー(PPG: photoplethysmography)
- ECG(心電図)機能

1.普段ずっと見張っているのは「PPG」
Apple Watch の裏を見ると、緑色に光っていますよね。
あれが「PPG(光電式脈波センサー)」です。
仕組みは意外とシンプルで、緑色LEDの光を皮膚に当てると血液がその光を吸収する性質を利用して心拍によって血液量が変化する反射光の変化をセンサーで検出する、という仕組みになっています。
つまり Apple Watch は、「血がドクンと流れたタイミング」を見ています。
なのでApple Watch で脈拍数をカウントしたり間隔が一定か否かは解析しやすい。
心房細動では、RR間隔(脈と脈の間隔)が不規則になります。
例えば、
60 pm(beats per minute, 1分間の脈拍数) /80 bpm /72 bpm /110 bpm/68 bpm
のように、ランダムに変動します。
Apple Watch は、PPG波形からこの「規則性の乱れ」を統計学的に解析して、「心房細動の可能性があります」と通知しています。
ただしPPGは「脈」を見ているだけ
しかしPPG が見ているのは、「電気活動」ではなく、「血流」です。
そのため、体動や冷えなどが影響する因子となります。
「不整脈っぽい」まではわかるのですが、“本当に何の不整脈なのか”までは確定できません。

2.ECG機能(単誘導心電図)
そこで追加されたのが ECG(心電図)機能です。Apple Watch では、電極1 Watch背面(金属部分) 電極2 デジタルクラウンとして機能しています。
指をクラウンに当てると、右手⇔左手首の間で電位差が生じます。
これは実質的には、心電図のときに両腕にあてているクリップでとっている電位に近いものです。
PPG と違い、ECG機能では心筋の電気活動を測定しています。
そのため、波形の細かい分析もできます。
つまり、「本当に不整脈なのか」をより詳しく評価する手がかりになります。
心房細動検出は実はかなり優秀
最近のスマートウォッチは非常に高性能になっており、研究でも比較的高い精度で心房細動を検出できることが報告されています。
特に、動悸がたまにしか起きない 、発作が短い 、病院に来た時には正常に戻っているようなケースでは、日常生活の中で記録できることが大きな強みになります。
次回はではApple watchからアラームサインがでたら、について対応方法を提案したいと思います。
【執筆】井上健司
東京ハートリズムクリニック新宿 院長
[専門領域]
・虚血性心疾患
・総合内科専門医・指導医
・日本循環器学会専門医
・心血管カテーテル治療認定医
Apple Watch などのウェアラブル機器は、不整脈を早期発見する大きな助けになる時代になってきました。特に心房細動は、脳梗塞の原因になることもあるため、“気づく”こと自体に大きな意味があります。一方で、「表示された=すぐ重症」というわけではありません。大切なのは、
• 必要以上に怖がらないこと
• でも自己判断で放置しすぎないこと
のバランスです。当院では Apple Watch の記録波形も含めて総合的に評価しています。「これって本当に不整脈なの?」「受診した方がいい?」と不安な方は、お気軽にご相談ください。

