喫煙と期外収縮
喫煙は不整脈を引き起こします。喫煙によって血中に入ったニコチンは、交感神経と副交感神経の両者に作用します。
どちらの神経にどれだけ作用するかは、その時の喫煙者の体調によって変動します。
交感神経に有意に作用すると、心拍数と血圧が上昇し、同時に期外収縮(脈拍が飛ぶ不整脈)が誘発されます。心室性期外収縮、心房性期外収縮のどちらも誘発されます。
実際、期外収縮のアブレーション治療の際には、その誘発剤として交感神経を刺激する薬を使うほどです。
喫煙と心房細動
では、喫煙は心房細動を引き起こすのか? その両者の関係を長期的に調べた疫学的研究が6つあります。
その内の4つの研究では、喫煙は心房細動の危険因子であると指摘し、喫煙により心房細動を引き起こすリスクは1.5倍高まると結論付けています。また、禁煙することにより、心房細動の発症率を非喫煙者と同等まで抑えられることが明らかにされています。
実験ではニコチンにより心筋に線維化が起こることも判明しました。線維化した心筋では電気がスムーズに流れなくなり、一旦始まった心房細動が続きやすくなってしまいます。これは持続性心房細動のメカニズムの一つの心房細動基質という状態そのものです。
ニコチン依存症
喫煙家はニコチン依存症という病気に罹患しています。ニコチンは脳内でドーパミン濃度を上昇させて、人に快感を与えています。
しかし、このドーパミン濃度が低くなると、イライラ、不愉快、やる気がでないなどの症状を自覚します。ニコチンの禁断症状です。
それらの症状をやわらげるために、喫煙します。この状態がニコチン依存症です。覚せい剤依存症と原理は同じです。
私の友人の父親は、心筋梗塞になり酸素テントの中に入れられていた状態で、爆発の危険性があるにもかかわらず、禁断症状に耐えられず、喫煙をしようとしたそうです。その様子を見ていた友人は、ニコチン依存症の怖さをまざまざと見せつけられたと話していました。
禁煙外来の実際
以下の質問のうち5項目以上にあてはまれば、ニコチン依存症と診断され、
禁煙治療を受けることを文書で同意していただければ、禁煙サポート薬の保険が適応されます。
Q1 | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 |
Q2 | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。 |
Q3 | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。 |
Q4 | 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。イライラ・眠気・神経質・胃のむかつき・落ち着かない・脈が遅い・集中しにくい・手のふるえ・ゆううつ・食欲または体重増加・頭痛 |
Q5 | 上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 |
Q6 | 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 |
Q7 | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 |
Q8 | タバコのために自分に精神的問題が起きていると分かっていても、吸うことがありましたか。 |
Q9 | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 |
Q10 | タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。 |
禁煙外来受診時には、呼気ガス中の一酸化炭素ガス濃度を測定するために、「ピコプラススモーカーライザー」を使用します。
息を吸い込み15秒間息を止めた後、マウスピースにゆっくりと息を吹き込むと一酸化炭素濃度の最高値が表示されます。
呼気一酸化炭素濃度は、喫煙後で3~5時間で約半分になりますので、当日の喫煙状況を把握することが可能です。
ちなみに、法律で定められた大気汚染に係る環境基準の上限値は10ppmです。
一酸化炭素濃度 | 分類 |
0~6 ppm | 非喫煙者 |
7~10 ppm | 要注意範囲 |
11~15 ppm | 喫煙者 |
16~25 ppm | 頻繁にタバコを吸う喫煙者 |
26~35 ppm | 常習的な喫煙者 |
36~50 ppm | 極めて常習的な喫煙者 |
51以上 ppm | 危険なほど常習的な喫煙者 |
禁煙サポート薬の内服
当院では禁煙サポート薬を治療に用いております。この薬は脳でニコチンがくっつく受容体に結合し、少量のドーパミンを放出することで、ニコチンの禁断症状を和らげます。
また、仮にタバコを吸ったとしても、受容体に禁煙サポート薬が結合していると、ニコチンがそこに結合することができず、喫煙による満足感を得ることができなくなります。禁煙サポート薬の用量を調整しながら12週間内服し、禁煙を試みます。
禁煙外来の費用
12週間の費用は、3割負担として21,626円(税込)です。 禁煙成功率は約6割。
不整脈で気になることがあればどうぞお気軽にご相談ください
当院は、不整脈の治療に特化したクリニックです。軽症、重症にかかわらず、すべての不整脈が診療対象です。
不整脈の原因は、加齢、高血圧、心臓病、飲酒のほか、睡眠時無呼吸症候群や喫煙などが挙げられます。当院では、確かな診断を行うために、失神、睡眠時無呼吸症候群、喫煙などの関連外来も設けています。
気になることがあればどうぞお気軽にご相談ください。