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2-2 原因、メカニズム

2-2 原因、メカニズム

2-2-1 心房細動の原因

心房細動の3大は、「加齢」、「高血圧、心臓病」、「飲酒」です。
下の表は、アメリカ合衆国と日本の疫学的調査により判明した、心房細動の危険因子です。細かいところは多少異なりますが、この2つに共通することは1)加齢、2)高血圧、心臓病(弁膜症、心筋梗塞、心筋症)3)飲酒です。

また、この3つに共通することは、心臓にストレスがかかった状態だということです。1)加齢により、長期間動き働き続けた心臓は疲弊します。2)高血圧、心臓病では心臓に直接ストレスがかかり、3)アルコールは、その分解産物であるアルデヒドが心筋に傷害を加えます。これらのストレスにより、心臓に傷がつき(変性し)、そこから心房細動が発生し始めるのです。

アメリカ合衆国・フラミンガム研究男性女性
年齢(10歳毎)2.1*2.2*
喫煙1.11.4
糖尿病1.4**1.6#
左室肥大(ECG)1.41.3
高血圧1.5#1.4**
心筋梗塞1.4**1.2
うっ血性心不全4.5*5.9*
弁膜症1.8#3.4*
*p<0.0001, **p<0.05, #p<0.01
日本・久山町第2集団研究男性女性
年齢1.8**2.5*
喫煙0.90.5
耐糖能異常0.91
左室肥大1.11.6
拡張期血圧1.11.2
虚血性心疾患3.4**1.5
弁膜症1.8**13.1**
飲酒1.9**
*p<0.05, **p<0.01

2-2-2 心房細動のメカニズム

心房細動は、次のどちらか、もしくは両者が存在することによって発症、持続します。

心房細動起源
心房細動基質

心房細動起源とは、1分間に500〜600回という高頻度で、興奮する異常な心房筋です。これが他の心房を高頻度に興奮させることにより、心房細動が引き起こります。

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心房細動基質とは、一旦始まった心房細動が停止せずに、持続し続けるための、心房の電気的特徴のことです。正常の心房筋は、洞結節の電気的刺激をスムーズに、素早く、心房全体に伝えます。しかし、その心房筋に傷みが生じると、心房の中で電気刺激が、ゆっくり進んだり、回転したりするようになります。そうなると、一旦生じた心房細動は持続しやすくなります。そういうゆっくり進んだり、回転したりする性質のことを心房細動基質といいます。

発作性心房細動は心房細動起源によって発症します。持続性心房細動、慢性心房細動は両者とも存在し、心房細動の持続期間が長いほど、心房細動基質の関与が大きくなります。

2-2-3 心房細動時の電気の流れ

心房細動中、1分間に500〜600回も興奮する心房細動起源は、心房の中で点として存在します。一個の心筋細胞なのか、複数の心筋細胞が集まっているのか不明ですが、数mm以下の点として存在します。

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この心房細動起源は、他の心房も高頻度に興奮させます。しかし、興奮させられる方の心房は、心房細動起源と同じような頻度では興奮できず、200〜300回/分程度の頻度です。この興奮頻度が少なく伝導することを、専門用語で減衰伝導といいます。

この200〜300回/分の心房興奮に、全く規則性はありません。その際、心房が興奮する様子を外から見ると、細かく震えているように動いています。まさに心房が細動しています。細かく震えながら動く心房では、血液はスムーズに流れていかず、心房の各所でよどみ始めます。よどんだ血液は、固まり始め、血栓となります。これが脳の動脈に詰まると、脳梗塞を引き起こします。

頻度が200〜300回/分の心房興奮は、最終的には、房室結節に到達します。房室結節では、電気興奮の伝播速度が極めて遅いので、かなりの心房興奮が打ち消され、結果的に心室に伝わる際は、100〜200回/分の電気的興奮まで落ちています。

つまり、500〜600回/分の興奮も、心室に到達するさいには、100〜200回/分の興奮頻度に落ちているということです(図3)。

生物学的に考えて、心筋の固まりである心室が、心房細動起源と同じように500〜600回/分で興奮していたら、あっという間に、心臓は疲弊し、動きを止めてしまうでしょう。心臓の中には、そうならないためのシステムが備わっています。神がそういうシステムを創ったのか、そういうシステムを持っている人類のみが生きながらえたのか。人体の神秘に畏敬の念を抱かざるをえません。

2-2-4 睡眠時無呼吸症候群

睡眠中にしばらく呼吸が止まり、それが解除されるときに大いびきをかく。この呼吸停止時間が長く続くと、熟睡感がなくなり、日中に集中力が欠け、眠たくてしょうがなくなり、ひどい場合には意識が消失してしまいます。「睡眠時無呼吸症候群」という病気です。仰向けで寝ていると、苦しくなって目覚める方は、これに該当します。

原因は様々ありますが、多くは肥満のために、睡眠中、舌根が沈下し、気道を閉塞して呼吸が停止してしまいます。痩せている人でも、なることはあり、特に、飲酒後の就寝中に、睡眠時無呼吸を引き起こすことがあります。お酒によって必ずしも良眠が得られるわけではない理由の一つです。

実はこの無呼吸症候群の患者さんは心房細動になりやすいのです。無呼吸中の低酸素血症が、心臓に負担をかけ心房細動になると言われています。治療としては、痩せることも効果がありますが、睡眠中に簡易型の人工呼吸器をとりつけるCPAPという治療が有効です。心房細動患者さんに重度の無呼吸症候群が認められたので、まずはCPAP治療を試したら、心房細動が全く起きなくなったという人もいるくらいです。

2-2-5 甲状腺機能亢進症

甲状腺とは頸部の前についている、内分泌器官で、全身の細胞の活動を活発化させるホルモンを産生します。

この甲状腺で必要以上にホルモンが作られてしまう状態が、「甲状腺機能亢進症」という病気です。この病気になると、甲状腺腫大(甲状腺が腫れる)、眼球突出、頻脈、発汗、振戦(手が震える)等の症状を来します。

この頻脈の一つとして、心房細動があります。我々医師は、心房細動患者を初めて診察した際には、原因精査の一つとして、甲状腺ホルモン値を測定します。甲状腺機能亢進症に伴う心房細動であれば、まずは甲状腺機能亢進症の治療を行わないと心房細動は治らないからです。

しかしながら、実際には、甲状腺機能亢進症の治療を行い、甲状腺ホルモンが正常化しても、心房細動はそのまま残存し、慢性化することが多々あります。その場合、カテーテルアブレーションが有効な治療手段となります。いままで、そのような患者さん20人以上に対してアブレーションを行ったことがありますが、治療成功率は90%以上です。

【執筆】桑原大志 医師・医学博士
東京ハートリズムクリニック院長
日本不整脈心電学会認定不整脈専門医