心房細動の原因とは?「3大原因」ってなに?
心房細動の3大原因は、「加齢」「高血圧、心臓病」「飲酒」とされています。
一見、何の関連もなさそうですが、これらに共通しているのは、「心臓にストレスを与えるものである」ということです。
1.加齢
1.加齢
年齢を重ねるにつれ、心臓は老化が進みます。
心臓は心筋と呼ばれる筋肉で作られており、生まれたときからまったく休みなく働き続けています。
しかし年を取ると、心筋細胞がどんどん老化していきます。
また、心臓のリズミカルな拍動に大きく関わっているミトコンドリア機能やタンパク質恒常性維持機能なども低下し、心臓のポンプ機能も少しずつ衰えていきます。
その結果、心臓の収縮能や拡張能は低下していきます。
さらに、心筋と心筋の間の部分にリポフスチンやアミロイドなどの異物が沈着し、心臓の筋肉が線維化し、組織中の結合組織が異常増殖する現象が生じます。
線維化を起こした臓器は、最後には機能不全に陥ります。特に心臓の筋肉で線維化が起きると、心臓の壁が厚くなったり(心臓肥大)、心臓が広がりにくくなったり(拡張障害)などが起きることがあります。
また、血液の逆流を防いでいる大動脈弁や僧帽弁などの弁が変性し、弁が厚くなったり硬くなったりする状態が進行して、石灰化がみられることもあります。それにより、弁の機能が低下する心臓弁膜症が起きて心臓の負担がますます大きくなります。
さらに、心臓の電気的な刺激を伝える刺激伝導系にも変性が進み、脈が乱れることもあります。(*1)(*2)
このように、加齢は心機能を著しく低下させる大きな要因であり、その結果、心房細動のみならず不整脈の誘因となりうることがわかっています。
2.高血圧、心臓病
2.高血圧、心臓病
そもそも血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことをいいます。
高血圧の状態になると、血管の内壁が圧力によりダメージを受け、動脈硬化などを起こしやすくなります。
また、高血圧になると、全身へ血液を送り出す左心室の負荷が高くなり、その影響を受けて心房の拡大や圧負荷を生じさせます。(*3)
その結果、心房筋の線維化が促進され、心房細動が生じると考えられています。(*4)


高血圧がある場合、ない人に比較して心房細動を1.5倍発症しやすくなります。
また、心房細動の重篤な合併症に脳梗塞がありますが、心房細動の人が高血圧を合併すると、そうでない人に比較して脳梗塞をさらに発症しやすくなります。
そして、心房細動のために血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を内服している人は、高血圧を合併すると脳出血などの出血性合併症を引き起こしやすくなることがわかっています。
それから、心臓病も、心臓の機能不全を起こし、心房細動の原因となります。特に、僧房弁狭窄症などの心臓弁膜症、狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患、拡張型心筋症や肥大型心筋症などの心筋疾患があると、心房に大きな負荷がかかった状態となり、心房細動の発症リスクが高まります。
3.飲酒
3.飲酒
飲酒も心房細動の危険因子になります。
飲酒と心房細動の関係性は以前から知られており、原因として、飲酒をすると交感神経が優位になることや、飲酒による低カリウム血症、心臓の器質的変化が誘因と考えられます。
また、アルコール代謝関連遺伝子も心房細動の発症に関わっています。
体内でアルコールが分解される過程では、アルコール脱水素酵素(ADH1B)と、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)という2つの酵素が関わっていますが、体質的に活性が弱い ADH1B 多型を持つ人は心房細動のリスクが高く、また、活性が弱い ALDH2多型を持つ人はリスクが低いという研究結果もあります。(*5)
これまで、アルコールと心疾患の関係についてはさまざまな研究が進められており、従来、「適度な飲酒は心臓病に良い」とする声も聞かれてきました。
1日2杯以上(1杯の基準量はアルコール12g ≒ ビール約300ml 相当)のアルコールを摂取すると心房細動のリスクが上昇することが報告されていたことから、「1日1杯程度であれば問題ない」とする意見もありました。
しかし最近では、これを覆す研究結果も見られています。2020年1月New England Journal of Medicine誌で、断酒により心房細動の再発が低下したとする研究結果が報告されていたのです。
さらにドイツで行われた大規模研究によると、これまで適量とされてきた1日1杯の飲酒でも、心房細動のリスクが高まる可能性が明らかになりました。
そのため、心房細動を発症した人にとってアルコールは危険因子となることに注意が必要です。
(*1)心臓 Vol.40 No.2 (2008)
(*2)公益財団法人 長寿科学振興財団
(*3)公益財団法人 日本心臓財団
(*4)心臓 Vol.43 SUPPL.1 (2011)
(*5)日循予防誌 第55巻 第2号

心房細動の三大原因は、「加齢」「高血圧や心臓病」「飲酒」です。これらはいずれも心臓に慢性的な負荷や変性をもたらし、不整脈を引き起こす可能性があります。心房細動は無症状でも脳梗塞などの重大な合併症を引き起こすことがありますので、日頃の健康管理と生活習慣の見直しが大切です。不安がある方は、ぜひ早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。
特定の疾患や生活習慣など、心房細動を招くその他の原因
これら3大原因のほかにも、心房細動を招く要素にはさまざまなものがあります。代表的なものを挙げてみましょう。
1.睡眠時無呼吸症候群
1.睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気のことをいいます。(*5)
近年の研究により、この睡眠時無呼吸症候群があると、心房細動を発症しやすいことがわかっています。


睡眠時無呼吸症候群を持っていると、持っていない人に比較し、心房細動の発生率が3〜5倍高くなります。
また逆に心房細動を患っている人の30〜80%が、睡眠時無呼吸症候群を合併しているといわれています。
そして、睡眠時無呼吸症候群があると、カテーテルアブレーション治療を行ったあとの、心房細動の再発率を25%高めてしまうこともわかっています。
さらに、そのような人に睡眠時無呼吸症候群の治療法であるCPAP治療を行うと、再発率を下げられるということも報告されています。
睡眠時無呼吸症候群が起きると、睡眠中に、鼻から気管にいたる空気の通り道(上気道)のどこかが閉塞し、呼吸が停止してしまいます。
その結果、息苦しさを感じて、無意識のうちに睡眠が妨げられ、日中に過度の眠気を来します。
睡眠時無呼吸症候群の罹患率は、成人男性で約3~7%、女性で約2~5%とされています。
年代別に見ると、男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加することがわかっています。(*6)
また、睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心血管疾患の危険因子となるほか、脳卒中、糖尿病、さらには認知症の発症リスクを高めることから、とても注意が必要です。(*7)


なぜ、睡眠時無呼吸症候群があると心房細動を発症しやすくなるのでしょうか。
人間の体は、日中は交感神経が、睡眠中は副交感神経が優位になることでバランスをとっています。
しかし睡眠中に無呼吸の状態となるたび、交感神経が活発になって血圧が上昇し、高血圧の状態が続いてしまいます。
さらに、無呼吸になると体は一生懸命酸素を取り込もうとして、肺を膨らませます。
すると心臓にも負担となり、その結果、心房細動をはじめとする不整脈や心臓肥大、大動脈の拡張などを招きやすいのです。
(*6)一般社団法人 日本呼吸器学会
(*7)SASnet
2.甲状腺機能亢進症
2.甲状腺機能亢進症
甲状腺とは喉仏のすぐ下にあり、甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。


甲状腺ホルモンとは、全身の臓器に作用して細胞の新陳代謝を盛んにしたり、交感神経を刺激したり、成長や発達を促進したり、人間が生きる上で重要な働きを担っています。
通常、甲状腺ホルモンの分泌量は下垂体の働きによって一定に保たれていますが、このバランスが崩れると全身に異常が生じます。
甲状腺ホルモンを過剰に産生する病気のことを甲状腺機能亢進症といい、その代表的な疾患がバセドウ病です。(*8)
バセドウ病のような甲状腺機能亢進症を発症すると甲状腺ホルモンだけでなく、カテコールアミンという神経伝達物質が過剰になり、動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきなどの症状が起こります。


また、心臓の機能が過剰に収縮するなど、心臓への負荷が増大して、心房細動を起こしやすくなります。
近年の研究により、特に症状がなくても潜在的に甲状腺機能亢進症が発症している場合には、心房細動のリスクが上昇することがわかっています。(*8)
通常、心房細動の患者さんを初めて診察する場合には、血液検査により、甲状腺ホルモンを調べます。
もし甲状腺機能亢進症であることがわかり、それに伴う心房細動であると診断された場合には、まず甲状腺機能亢進症を治療しなければ心房細動を抑制することはできないからです。
しかし実際のところ、甲状腺機能亢進症の治療を行って甲状腺ホルモンの分泌量が正常に戻ったとしても、心房細動がそのまま残ってしまい、慢性化してしまうこともあります。その場合には、カテーテルアブレーション治療を行うことで、心房細動の発作を抑制します。
(*8)一般社団法人 日本内分泌学会
3.生活習慣
3.生活習慣
心房細動の危険因子となるものには、以下のものもあります。
- 慢性の肺疾患
- 糖尿病
- 過剰なカフェイン摂取
- ストレス
- 睡眠不足
特に最近注目を集めているのが、慢性閉塞性肺疾患と心房細動の合併です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)とは、これまで「慢性気管支炎」や「肺気腫」と呼ばれてきた病気の総称のこと。(*9)
喫煙習慣のある人に多く発症し、タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入することで気管支が炎症を起こしたり、肺機能が低下したりする疾患です。(*10)


研究により、心房細動患者におけるCOPDの合併率は約25%にものぼり、COPDで起こる換気障害、肺の圧上昇、慢性的な低酸素、自律神経の変化などによって心房細動が引き起こされることがわかっています。(*11)(*12)
また、呼吸機能の低下は冠動脈疾患や心不全など、心房細動の危険因子となる疾患を招くことが多いこともわかっており、慢性の肺疾患と心房細動の間には密な関係があることが指摘されています。
それから、糖尿病も心房細動の危険因子となることが知られています。
糖尿病には主に自己免疫学的機序により、インスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなる「1型糖尿病」と、遺伝的素因によるインスリン分泌能の低下に、生活習慣の悪化など環境的素因に伴うインスリン抵抗性が加わり、インスリンが相対的不足に陥る「2型糖尿病」がありますが、心房細動と関わりが深いのは、2型糖尿病です。(*13)
2型糖尿病の人が血糖コントロールをうまく行うことができないと、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性や、耐糖能異常、炎症や酸化ストレス、血小板の亢進、心臓組織の線維化などが起こりやすくなり、これらが心房細動の発症につながりやすいことがわかっています。
そのほか、カフェインの過剰摂取も心拍数の上昇を招き、心房細動の危険因子になると伝えられています。
米国心臓協会(AHA)も「朝のコーヒーを飲まないなどシンプルな行為で、心房細動を避け、その後の発作のリスクを減らすことができるかもしれない」と述べています。
しかしその一方、毎日2〜3杯のコーヒーを摂取することは、心房細動を含む危険な不整脈や心疾患のリスクを低下させるだけでなく、長寿とも関連することが、近年の研究により明らかになっています。(*14)
そのため、厳格にコーヒーを制限する必要はなく、あくまでも「過剰な摂取を控える」ということが、心房細動の予防や症状の抑制には必要です。


また、ストレスや睡眠不足も心房細動の危険因子となります。
なぜこれらが心房細動と関連するのかというと、自律神経のバランスを崩すから。
心房細動の発生には自律神経が深く関与しており、これまでの研究により、自律神経の急激な乱れが心房細動の引き金となることがわかっています。 (*15)
(*9)一般社団法人 日本呼吸器学会
(*10)東京都保健医療局
(*11) Sami O Simons et al. Chronic obstructive pulmonary disease and atrial fibrillation. Eur Heart J. 2021 Feb 1;42(5):532-540.
(*12)日本離床学会
(*13)一般社団法人 日本内分泌学会
(*14) Journal of the American Heart Association. 2019 08 06;8(15);e011346. doi: 10.1161/JAHA.118.011346.
(*15) 第24回頻拍症カンファランス 心房細動に対する自律神経アブレーション

心房細動のリスクは加齢や高血圧だけでなく、睡眠時無呼吸症候群や甲状腺疾患、慢性肺疾患、糖尿病といった基礎疾患、さらにストレスや過剰なカフェイン摂取、睡眠不足など日常生活の中にも潜んでいます。原因を知ることが予防の第一歩です。
心房細動は他の不整脈とどう違うのか?
心房細動は、頻脈の一種です。
そもそも人間の脈は安静時1分間に50~100回、規則正しく打つ脈が正常とされています。
しかし、なんらかの原因により脈のリズムが崩れてしまうことがあります。
その状態を「不整脈」といいます。
不整脈は、脈が速くなる「頻脈」、脈が遅くなる「徐脈」、脈が飛んでリズムが狂ってしまう「期外収縮」の3つに分けられます。
- 頻脈
心筋を動かす電気信号が頻繁に作られたり、異常な電気の通り道ができたりして、脈が速くなる。脈の数は1分間に100以上 - 徐脈
頻脈とは反対に、電気信号が作られなくなったり、途中でブロックされてしまったりして、脈が遅くなる。脈の数は1分間に50以下 - 期外収縮
本来、電気信号が生じる場所以外から電気信号が発生することにより、正常なリズムが狂ってしまう。脈は不規則
心房細動は、心房の電気信号が異常を起こし、無秩序に電気信号が生じている状態で、「頻脈」にあたります。
頻脈に該当するものには、他に次のようなものがあります。
- 心房粗動
- 発作性上室性頻拍
- 心室細動
- 心室頻拍
心房粗動は心房細動と似た疾患で、どちらも心房が異常に興奮し、細かく痙攣することで機能が失われるという特徴がありますが、心房が興奮する回数や、電気信号の発生する場所などに違いがあります。
心房細動の場合、心房内のさまざまな場所から電気刺激が発生しており、1分間に500〜600回という高頻度で無秩序に興奮します。
一方の心房粗動は右心房内を電気刺激が旋回している状態であり、興奮は規則的で、1分間150回程度の頻脈を生じさせます。(*16)


心房細動に比べて心房粗動の方が軽症のように思われますが、心房粗動が心房細動へ移行する場合もありますし、心房細動同様、脳梗塞を引き起こすリスクがあるので、注意が必要です。
そのほかの発作性上室頻拍も、上室=心房を起源とする不整脈で、突然動悸や胸部違和感などの発作が起こり、突然止まるという症状を引き起こします。
一般に、心房を起源とする頻脈は突然死の原因となるリスクは小さいとされており、特に心房細動は、発作が起きてしまっても心臓から血液が送り続けられるため、すぐ、心停止に至る可能性は低いとされています。(*17)
一方、心室に起源を持つ頻脈には危険なものもあります。たとえば心室細動や心室頻拍は突然、心臓が止まることもある危険なタイプの不整脈です。
特に心室細動は、心臓が原因で起こる突然死の原因のうち約8割を占めているという研究結果もあります。
そのため万が一、心室細動が起こったらすみやかにAED(自動体外式除細動器)で電気的な刺激を心臓に与え、人工的に心臓の働きを回復させることが重要になります。


(*16)公益財団法人 日本心臓財団
(*17)心臓 Vol.43 No.10 (2011)
心房細動が起きたときには、電気信号がどう流れるのか?
心房細動は心房の電気信号が異常を起こしている不整脈で、心房細動が起きると、脈拍が完全に不規則になってしまいます。
治療が必要な不整脈の中で最も多く認められるもので、心房細動が起きることで血栓が作られやすくなることから、正常の脈拍(洞調律)に比較し、脳梗塞になるリスクが高くなってしまいます。
下に示したのは、洞調律時と心房細動に心電図モニターが示す波形です。


洞調律時の、心房の興奮を示す波をP波、心室の興奮を示す波をQRS波といい、この2つはセットになって規則正しい間隔で出現しています。
このQRS波が出現する際に、血液が体全身に送りだされており、これがいわゆる「脈拍」として感知されます。
洞調律(正常リズム)の波形では、P波がきちんと現れ、QRS波も規則的に出現しています。
しかし心房細動の波形ではP波と呼ばれる部分が消失し、基線(ベースライン)上で細かく揺れています。これを細動波といいます。
そして、QRS波の規則性は失われており、脈拍も完全に不規則となっていることがわかります。

心房細動は、加齢や高血圧、飲酒などの三大要因に加え、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進症、慢性肺疾患、糖尿病、ストレスや睡眠不足など多くの要因が関与する複雑な疾患です。こうした背景を理解し、生活習慣の改善や基礎疾患の治療を行うことで、心房細動の発症や再発を予防することが可能です。
心房細動になりやすい人は? 予防法はある?
心房細動になりやすい人には、一体どのような特徴があるのでしょうか。
考えられる危険因子を挙げてみます。
- 高齢(60歳以上)である
- 高血圧である
- 糖尿病である
- 肥満である
- 睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)がある
- 尿酸値が高い
- 喫煙習慣がある
- 飲酒習慣がある(アルコール消費量が多い)
- 心疾患を持っている(心不全、心筋梗塞、狭心症、弁膜症)
- 慢性的な肺疾患を持っている
- 大きなストレスを感じることが多い (*18)
- 親が心房細動である
糖尿病や肥満、睡眠時無呼吸症候群などは、心房細動を招く重要な危険因子です。心房細動を予防するためには、これらを改善することが必要です。
また尿酸値については海外でもさまざまな研究が進められており、中年期に尿酸値が高いとその数十年後に、不整脈のリスクが大幅に上昇する可能性を示唆する研究結果が提示されています。
尿酸とは、体内でプリン体が分解される際にできる物質であり、プリン体はアルコール、特にビール、赤身肉、内臓、ベーコン、イワシ、ニシン、ホタテ貝、ムール貝などの食品に大量に含まれているとされています。
また、急激な体重増加や激しい運動などにより体内で大量のプリン体がつくられることもあり、プリン体の増加に伴って尿酸値が高くなると、痛風や尿路結石、腎障害などを引き起こすことが知られています。
それだけでなく現在では、高尿酸血症によって高血圧、糖尿病、心臓病のリスクが上昇する可能性も示唆されています。
また最近の研究によると、高尿酸血症と心房細動には相関関係があることも示唆されています。
高尿酸血症が直接的に心房細動のリスクを高めるのかどうかはまだ明らかにされていませんが、近年、高尿酸血症と心房細動の関連性を示す報告も多く見られることから、尿酸値が上がらない生活を心がけることが、心房細動の予防には必要となります。(*19)
高尿酸血症を予防するためには、以下のことが有効とされています。
- 食事の量を減らす
- すべての種類のアルコールの量を減らす
- プリン体(ビール・魚卵・肉・魚などに多く含まれる)の摂取が多い人はそれらを控える
- 軽い有酸素性運動を行う (*20)
- 水分と野菜を多くとる


また、喫煙や飲酒、大きなストレスなども心房細動の要因となりますから、生活習慣を改め、ストレスがたまらないようにするなど、普段からの心がけが必要です。
それから、心房細動の発症には遺伝も関係していることがわかっています。
心房細動はさまざまな疾患に合併しますが、約10〜20%の患者さんは明らかな基礎疾患がない、孤立性の心房細動です。
また心房細動は家族内発生が高く、心房細動の患者全体の5%、孤立性の心房細動では15%に家族歴があることがわかっています。
さらに、片親が心房細動の場合は1.85倍、両親ともに心房細動の場合は3.23倍、 心房細動の発症率が高くなることもわかっているため、「親が心房細動である」という場合には、より一層注意が必要になります。(*21)
その一方、原因が不明の心房細動もあるため、家族歴の有無に関わらず、高血圧などに気をつけ、心臓に負担をかけない生活を送ることは重要です。
(*18)オムロンヘルスケア株式会社
(*19)痛風と核酸代謝 第40巻 第2号(平成28年)
(*20) 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット
(*21)これだけは知っておきたい! 家族性心房細動の遺伝子基盤

心房細動の予防には、基礎疾患の管理と生活習慣の見直しが重要です。高血圧、糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸症候群などを適切に治療・改善することでリスクを低減できます。さらに、禁煙・節酒・十分な睡眠・ストレスの軽減も有効です。家族歴がある場合や不整脈が気になる方は、定期的な心電図検査で早期発見に努めましょう。
まとめ
心房細動は心室細動や心室頻拍など、他の頻脈性不整脈と違ってすぐに心停止に至ることはほとんどありません。しかし慢性化すると脳梗塞のリスクが高まるなど危険な不整脈であることには変わりません。原因をしっかり知り、生活習慣を改善する、心疾患や睡眠時無呼吸症候群などの危険因子がある場合は治療するなど、予防に努めるように意識しましょう。

心房細動の原因は多岐にわたり、「加齢」「高血圧・心疾患」「飲酒」の三大要因に加え、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能異常、糖尿病、肥満、ストレス、遺伝的素因なども関与します。これらは心房の構造や電気的性質に影響を与え、心房細動を引き起こします。正確な理解と生活習慣の改善が、発症予防と再発抑制の鍵となります
心房細動は早期発見と治療が鍵です


心房細動は放置すると、脳梗塞や心不全など重篤な合併症を引き起こすリスクがありますが、早期発見と適切な治療により予後の改善が可能です。
当院では、心電図検査などによる正確な診断はもちろん、薬物治療に加えてカテーテルアブレーションによる根治治療にも対応しております。
動悸や息切れなど、気になる症状がある方は、どうかそのままにせずご相談ください。専門医が一人ひとりに最適な治療をご提案いたします。初診のご予約は、WEBまたはお電話にて受け付けております。