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日本人の2割が経験あり!? 「失神」のパターンと倒れてしまったときの対処法

コラム

日本人の2割が経験あり!? 「失神」のパターンと倒れてしまったときの対処法

失神とは、血圧が低下し短い時間、意識を失う発作のこと。日本人の2割が、人生で一度は失神を経験するとされています。一体、失神の原因とはなんでしょう。「受診のタイミングは?」「失神を起こしたときの対処法は?」。桑原院長が詳しく解説します。

目次

失神の定義と、紛らわしい病気の鑑別方法

長時間立ちっぱなしだったり、痛みによる刺激が強かったり、精神的ストレスが大きかったりすることが原因で、失神発作を起こしたことがある人もいるでしょう。しかし、自分が経験したその発作が「本当に失神だったのか?」と、疑問に感じている人もいるかもしれません。まずは、正確に失神を定義してみます。

失神とてんかんの区別とは?

「気を失う」「気絶する」ことを「失神」と思われているかもしれませんが、実際には、失神には明確な定義があります。

失神とは短い時間、血圧が低下して心臓から脳に送る血液量が少なくなり、脳全体が酸素不足になって意識を失う発作のことを言います。

ここでいう「短時間」とは、多くの場合数分間、場合によっては数十秒。長くても5〜10分程度です。失神して意識を消失している間は、姿勢を保持することができませんが、失神から覚めると完全に意識が回復し、元に戻ります。

失神で倒れた人がいた場合、まず、行わなければならないのは失神とてんかんの鑑別です。
失神とてんかんはとてもよく似ており、鑑別が難しいのですが、決定的に違うのは回復の仕方です。

てんかんは意識を失って回復するまでの経過がとてもゆっくりで、意識が戻ったあとも、しばらくの間はボーっとしているのが一般的です。一方、失神は多くの場合、意識が回復すると驚くほどスカッとよくなります。
ほかにてんかんの場合は、「舌を噛む」「頭位が変換する(頭が上や横を向く)」などの特徴もあります。

10人に2人は一生のうちに一度は失神を経験する

失神は日常診療でよく遭遇する症状であり、日本人の人口全体における生涯有病率は約20%と言われています。つまり、10人に2人は一生のうち一度は失神を引き起こす、ということです。

失神の原因は、主に4つあります。

  • 神経反射性失神
  • 起立性失神
  • 不整脈
  • 心臓肺器質的疾患

以前は原因不明の失神が1/3程度あるとされていましたが、現在では植込み型心臓モニタが発達し、不整脈が原因の失神を解明できるようになったため、「原因不明」の失神は10%程度に減少しました。

「失神は脳の病気が原因ではないか」と考える人も多いかもしれませんが、実は失神の原因は脳と関係ありません。なぜなら、脳には非常に豊富な血液が供給されているため、頭の動脈硬化が原因で失神を引き起こすことはほとんどないからです。
ただし、脳梗塞や一過性虚血発作の場合、気を失うことはありますが、急速に回復したり完全に回復したりすることはありません。その点が失神との違いです。

失神の原因4種類を詳しく解説

「失神」とひとくちにいっても、人によって原因が異なります。なかには、治療が必要な疾患が原因となって失神が起きていることもありますから、まずは、原因を追求することが必要です。

(1)神経反射性失神

失神の原因として一番多いのは、「神経反射性失神」です。よく学生が朝礼のとき、校長先生の長い話を聞いている最中に倒れることがありますよね。これは「血管迷走神経性反射」といって、典型的な神経反射性失神の症状です。

神経反射性失神は、通常、何かに対するストレスに起因します。

痛みや疲れ、緊張などのストレスがあると交感神経が非常に緊張し、副交感神経が交感神経を抑制しようとして、一気に亢進します。すると吐き気、蒼白、発汗、あくび、便意などの前駆症状が現れ、その後、失神が起こります。

失神を起こす直前、人によっては「目の前が暗くなる」などの自覚があり、しゃがみこむ場合もありますが、なかには、なんの自覚もなく突然、倒れてしまう人もいます。なぜなら副交感神経が亢進すると、急激に血圧低下あるいは心停止(徐脈)の状態になるから。そのように急激な変化が起きる場合は、自覚もないまま突然失神する状態になります。

それから神経反射性失神のなかには、「状況性失神」というものもあります。これは排尿、排便、飲食、咳に誘発される失神のことで、特に多いのは飲食です。食事をしたあと「食後性低血圧」といって、食後5〜10分で意識を失ってしまう人は少なくありません。

また、咳をしたあと、突然白目をむいて失神してしまう人もいますし、排便や排尿のあとに立ち上がった瞬間、失神する人もいます。

なぜ、排尿、排便、飲食、咳のあとに失神を起こすのかというと、これらの行為はみな、副交感神経が緊張するものだから。そのため、これらの行為のあとに血圧が下がって失神を起こしてしまうのです。

(2)起立性失神

「起立性失神」も「神経反射性失神」同様、頻度の高い失神です。細かく分けると次の2つがあります。

  1. 即時性起立性低血圧 座位から急に立ちあがったときに発症。10〜20秒程度で完全に治まる。いわゆる「立ちくらみ」
  2. 遅発性起立性低血圧 起立後しばらくして(通常1〜数分)発症

この2つうち、怖いのは遅発性起立性低血圧です。起立後しばらくしてから失神するため、本人としては転倒の危険から身を守る準備ができていませんから、転倒する場所によっては怪我などの事故を伴うこともあります

この遅発性起立性低血圧は、一般にあまり認知されていない症状のため、見逃されてしまうこともあります。特に高齢者の方はご注意ください。

とりわけ、水分摂取量が不足しているとき、利尿剤を使用しているとき、特定の胃腸障害に伴う脱水が起きているときには、こうした遅発性起立性失神が起きる可能性があります。立ち上がってからしばらく時間が経過し、「立ちくらみが起きないから、もう大丈夫」と油断しないようにしましょう。

(3)不整脈

不整脈による失神は、神経反射性失神の次に多く起きていると考えられます。
不整脈には脈の乱れ方によって3つの種類がありますが、なかでも失神と関係が深いのは、脈が異常に遅くなったり、間隔が長くなったりする「徐脈」です。
特に、「洞不全症候群」といって、心臓を動かすために電気信号による刺激を生み出す「洞結節」の働きに異常が起こり、徐脈や心停止を起こす「洞不全症候群」や、心房から心室の電気的興奮の伝導が障害される「第2および第3度房室ブロック」が、不整脈の原因となる症例が目立ちます。
また、ペースメーカーの誤作動や薬剤誘発性徐脈も、不整脈の原因の一つです。

稀にではありますが、脈が異常に速くなる「頻脈」も失神の原因となります。特に心室頻拍や、突然死の原因にもなる「トルサード・ド・ポアント」、上室性頻拍症が失神を招くことがありますが、頻度的には非常に希で、多くの場合は先述の通り、徐脈が失神の原因となります。

(4)心臓肺器質的疾患

心臓肺器質的疾患とは、心臓や肺に物理的・物質的な異常がある疾患のこと。失神を引き起こすリスクのある疾患として代表的なものに、大動脈弁狭窄症と、肥大型心筋症(HCM)があります。

大動脈弁狭窄症とは、心臓の弁のひとつがきちんと開かず、心臓から全身に血液が送り出しにくくなってしまう病気のこと。一方、肥大型心筋症とは、心肥大を起こす原因となる高血圧や弁膜症などの疾患がないにもかかわらず、心筋が肥大する病気のことです。

特に肥大型心筋症の場合は、最大25%の患者に失神が起きるとされていますが、これらはエコーなどの検査をすれば比較的、容易に疾患を見つけることができますし、失神予防のために薬を投与されていることもあるため、日常臨床上、これらの疾患によって起きる失神が問題になることはあまりありません。

失神を予防するには?いざという時の対処法は?

失神を引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、一体、失神を予防することはできるのでしょうか。また、いざという時にはどのように対処したら良いのでしょうか。毎日の生活に役立つ知識をご紹介します。

失神で倒れたら「足を高くして、頭を低くする」

失神の原因として一番多いのは「神経反射性失神」であり、心停止型と低血圧型の2種類があることは、上記でお話しした通りです。ではこれらを予防することはできるのでしょうか。
率直にいって、心停止型の場合はペースメーカーを使用することによってある程度、失神を予防することはできますが、低血圧型の場合には予防することはほとんど不可能です。

神経反射性失神が起きたら足を高く、頭を低く

神経反射性失神を起こしたときの対処法は、下の図のように足を高くして頭を低くし、脳に血液が流れるようにすることが大切です。こうすると失神が改善され、気分が楽になるでしょう。

この対処法は、自分が失神で倒れたときだけでなく、身の回りの人が急に失神で倒れたときなどに役立つので、ぜひ、覚えておいてください。

ただし、「足をあげる」という対策が有効なのは、神経反射性失神や起立性失神のように、血圧低下が原因となって起きる失神の場合だけ。不整脈が原因となっている失神の場合は効果が期待できません。

生活習慣で失神が起きないように気をつけられることは、塩分を少し多めに取るくらいで、残念ながら失神を完全に予防することはできません。

なかには「こうすると失神が起きる」ということを経験則的に知っている方もいます。たとえば「注射をすると失神するので、あらかじめ仰向けになって注射する」といったように、自主的に対策をとりやすいケースも。自分の失神してしまうパターンが分かっている場合は、事前に安全を確保しておきましょう。

また、テレビなどで、失神を起こした人に冷水をかけたり顔を叩いたりするシーンを見たことがあるかもしれません。これにも実は意味があり、交感神経を緊張させて血圧を上げているのです。そのため、もし身近な人が失神を起こしたら、無理のない範囲でこうした対応をするのも一つの手段です。

毎日のトレーニングで失神が起きにくくなる!?

しかし、失神を頻繁に繰り返してしまう人もいます。特に、血管迷走神経性反射のケースです。

この場合、次の図のような起立調節訓練法(チルトトレーニング)を行うことによって失神を起きにくくさせます。

正直なところあまりエビデンスがないため、効果は定かではありませんが、一般的には、チルトトレーニングを繰り返すうちに、血管の抵抗があがって収縮しやすくなり、その結果、失神が起こりにくくなるといわれています。 血管迷走神経性反射による失神を繰り返している人は、1日1回、20分程度試してみると良いかもしれません。

<起立調節訓練法(チルトトレーニング)のやり方>
壁に背中を密着させ、かかとを壁から15cm離して立つ。
そのまま壁にもたれた状態で20分程度キープする。
*トレーニング中に気分が悪くなったり、動悸やめまいを感じたりしたときはすぐに中止し、かかりつけ医に報告してください。

冒頭でお話したとおり、失神は日本人の20%が人生で一度は起こしています。つまり、誰もが失神を起こす可能性があるのです。特に神経反射性失神は、失神とはいかないまでも失神に近い状況を体験したことがあるはずです。

しかし、失神で倒れた場所によっては、重篤な怪我や事故につながりかねません。身近な人が失神を起こしたら、「すぐに安全を確保できる場所へ運ぶ」、そして先にお伝えした通り、「足を高くして血流を改善する」という対処法を行いましょう。 また、原因を探るためにも、失神を起こしたらまずは循環器科を受診することを忘れずに。不整脈などの疾患が原因となって失神が起きている場合もありますから、できるだけ早く受診し、失神した時の状況や症状、その後の経過などを詳しく医師に伝えましょう。

執筆者

東京ハートリズムクリニック 院長
桑原 大志

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