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第1部 不整脈とは

第1部 不整脈とは

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不整脈とは

不整脈の定義

不整脈とは、読んで字のごとく、脈が不整になることです。整っている脈、つまり正常の脈拍とは、「安静時に1分間に50~100回、規則正しく打つ脈」です。それ以外の脈拍を不整脈と言いますが、運動時や興奮したときに、脈拍数が100回/分以上になることは、生理的な反応であり、不整脈とは言いません。

不整脈の種類

最も頻度の多い不整脈は「時折、脈拍が飛ぶ」期外収縮です。予期したときから外れて心臓が収縮するのでそのように呼ばれています。期外収縮の起源によって、上室性(心房性)期外収縮心室性期外収縮の2種類があります。

また、治療すべき不整脈で最も頻度の多いものは心房細動です。心臓の心房というところが、非常に速い頻度で興奮して、心室と連携して拍動しなくなります。心拍のリズムの規則性は完全に失われ、心拍数は40〜230拍/分に変動します。心房と心室が連携して動かないため、心臓の中で血液が淀み、血液の塊(血栓)ができやすくなり、それが飛んで脳の血管に詰まると、脳梗塞を起こしてしまいます。心臓は通常、速い頻度で興奮し続けるために、疲労困憊し、心臓の収縮力が弱まり、動いた時に息切れを自覚するようになります。この状態を心不全といいます。

また、突然、心拍数が規則正しいリズムで150〜200拍/分程度に上昇し、突然、もとに戻る不整脈を発作性上室性頻拍症といいます。発作のメカニズムによって3つに分類され、それぞれを副伝導路症候群、房室結節リエントリー性頻拍、心房頻拍と呼びます。

心室に起源を有する規則正しい、100〜230拍/分の頻拍は、心室頻拍といいます。もともとある心臓の病気の程度により、重症度は様々です。心臓に何も問題がない方は、心室頻拍中に動悸やめまいを自覚する程度で問題を引き起こしませんが、心筋梗塞の既往がある方などは、心室頻拍で亡くなってしまう場合もあります。

不整脈の中で最重症なものが、心室細動です。何も処置を行わなければ、そのまま死亡します。全く健康な人に突然発症する場合と、心筋梗塞の既往のある方が心室頻拍を経由して心室細動に至る場合があります。全く健康な人に発症する場合は、特発性心室細動、QT延長症候群、ブルガダ症候群のいずれかに該当します。安静時の心電図にそれぞれの特徴を有していたり、失神の既往があったり、血縁者の中に突然死を来した人がいたりする人が心室細動になりやすいです。

上記は一般的に心拍が速くなる不整脈ですが、遅くなる不整脈もあります。心房に存在する心拍の電気刺激を出す洞結節という場所の働きが悪くなり心拍が遅くなるものは洞不全症候群と呼ばれます。心拍が突然5〜10秒停止し、失神発作やめまいを自覚したり、安静時の心拍数が30〜40拍/分となり、動いた時に息切れを自覚したりします。前述の心房細動に合併する場合もあります。

心房と心室の間にはその心拍の電気刺激を伝えるために、房室結節という組織があります。そこの働きが悪くなると、房室ブロックという状態を引き起こします。重症度により、1度、2度、3度房室ブロックに分類されますが、病的な状態を引き起こすのは、2度、3度房室ブロックです。洞不全症候群と同様に、心拍が突然5〜10秒停止し、失神発作やめまいを自覚したり、安静時の心拍数が30〜40拍/分となり、動いた時に息切れを自覚したりします。

不整脈の診断

すべての病気に当てはまりますが、まずは正しい診断をくださなければなりません。そのために、最初の手がかりとして非常に重要なものは、詳しい診察です。いつから、どんな症状を、どの程度自覚しているか、病気の既往はないか、家族に不整脈を持っている人がいないか、心臓の音、肺の音、頸動脈の音、大腿動脈の音、甲状腺の腫れ、顔面、足の浮腫の有無などを医師が患者さんと面談して確認します。その後に、必要な検査を実施します。検査は心電図、携帯型心電図、ホルター心電図、植込み型心電図、運動負荷心電図、心臓超音波検査、胸部レントゲン写真、心臓造影CT、血液検査です。

不整脈の治療

すべての不整脈が治療対象になるわけではありません。無害な不整脈もあり、その際は何もせずに放置します。診察の結果、治療が必要となった場合は、薬物療法、カテーテルアブレーション、ペースメーカー治療の中から治療方法を選択します。それぞれの治療方法にメリット、デメリットがあり、すべてを考慮した上で、医師から患者さんに最適と思われれる治療方法を提示します。患者さんがそれに同意するようであれば、その治療方法を実行いたしますが、他の治療方法を希望される場合もあります。

【執筆】桑原大志 医師・医学博士
東京ハートリズムクリニック院長
日本不整脈心電学会認定不整脈専門医