健康診断やスマートウォッチで目にする「脈拍」。
数字が高いと心配になり、低いと健康そうに感じるかもしれません。
健康な成人の安静時心拍数は、一般に1分間60〜100回が目安とされます。
ただし、これは病気と健康を分ける絶対的な数字ではありません。
運動習慣のある人では50回台、場合によってはそれ以下でも問題のないことがあります。
脈拍は運動、発熱、脱水、睡眠不足、緊張、カフェイン、飲酒、薬などでも変化します。
大切なのは一回の数字ではなく、「普段の自分と比べてどうか」です。
「脈が遅いほど長生き」は本当?
大規模な観察研究では、安静時心拍数が高い人ほど、その後の死亡リスクが高いという関係性が繰り返し報告されています。
約4万人を追跡した研究でも、安静時心拍数が10回/分高いごとに、全死亡や心血管疾患などによる死亡リスクが高くなる傾向が示されました。
では、脈を下げれば長生きできるのでしょうか。
そう単純ではありません。これはあくまで観察研究であり、「薬などで心拍数を下げれば寿命が延びる」と証明したものではありません。
安静時心拍数が低い人には、運動習慣がある、心肺機能が高いなど、別の健康要因が関係している可能性もあります。
つまり、脈拍は健康状態を映す一つの指標ですが、「低ければ低いほどよい」というわけではありません。
スポーツマンはなぜ脈が遅い?
『高強度の』持久系のトレーニングを続けている人では、安静時心拍数が40〜50回/分程度まで低くなることがあります。
トレーニングによって心臓は1回の拍動でより多くの血液を送り出せるようになり、少ない心拍数でも必要な血流を保てるようになるためです。
いわゆる「スポーツマンハート」です。
ただ、私はここにもう一つ可能性があるのではないかと思っています。


「走るから脈が遅い」のか、「脈が遅いから走る」のか?
安静時心拍数には、運動習慣だけでなく遺伝的な影響もあることが知られています。
特別に激しい運動をしていなくても、もともと脈が50回/分前後という人はいます。
そしてご家族にも同じように脈の遅い方がいることがあります。
かくいう私自身も、普段の安静時心拍数は46〜48回/分程度で、父も兄も脈が遅い方です。
そして私は、かなりの「マラソンラブ」です。今でもフルマラソンを走ります。
でももとは好きではありませんでしたし、むしろ嫌いでした。
ただ走ったら走れたんです。そこで、私は思うのです。
「走っているから脈が遅い」のか。それとも「もともと脈が遅い体質だから長い距離を走ることが苦にならず、マラソンが好きになった」のか。
一般には、持久系スポーツを続けることで心拍数が遅くなると説明されます。
もちろんそれは正しいのですが、逆に「もともと脈が遅い体質の人が持久系スポーツに向いていて、そういう人が持久系スポーツを選びやすい」という方向も多少あるのではないでしょうか。
これは私個人の仮説です。
ちなみに、シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんは、ご自身のXで、心拍数について「現役時代は30〜48でした」とコメントされています。
もちろん心拍数だけで持久力が決まるわけではありません。
それでもマラソンラブの私としては、「もともとの素質」と「トレーニング」の両方が関係しているのでは、と想像したくなります。
天賦の才能に不断の努力が加わると金メダルになります。
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ただし、遅い脈がすべて安全とは限りません
脈が遅いからといって、すべてがスポーツマンハートというわけではありません。
めまい、失神、息切れ、強いだるさがある、運動しても心拍数が十分に上がらない、脈が極端に遅い・不規則といった場合には、医療機関での評価が必要です。
洞不全症候群や房室ブロックなどでも脈は遅くなります。
Apple Watchなどで心拍数を見る場合も、一回の数字より「いつもの自分から変化していないか」を見ることが大切です。
まとめ
安静時心拍数が低い人ほど長寿であるという観察結果はあります。
しかし、「脈が遅ければ遅いほど健康」という意味ではありません。
スポーツをすることで脈が遅くなる。一方で、もともとの体質や遺伝も関係している。
走るから脈が遅いのか、脈が遅いから走るのが好きなのか。
脈拍を見るときには、一つの数字に振り回されず、「普段の自分と比べてどうなのか」「症状を伴っていないか」を見てください。
東京ハートリズムクリニックは、不整脈を専門に診療を行う循環器内科です。
「いつもの自分と比べて何かがおかしい」「スマートウォッチで異常を指摘された」など、心臓について少しでも不安がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
- Seviiri M, et al. Resting heart rate, temporal changes in resting heart rate, and overall and cause-specific mortality. Heart. 2018;104:1076–1085.
- Reimers AK, et al. Effects of Exercise on the Resting Heart Rate: A Systematic Review and Meta-Analysis of Interventional Studies. J Clin Med. 2018;7:503.
※本記事は一般的な健康情報です。脈拍の異常が続く場合や、めまい、失神、息切れ、胸痛などを伴う場合には医療機関にご相談ください。

