「突然、意識を失って倒れてしまった」
このような「失神」で病院を受診しても、検査をした時には心電図に異常がなく、原因が分からないことがあります。
失神の原因はさまざまですが、その中で見逃したくないものの一つが不整脈です。
しかし、不整脈による失神には診断上の難しさがあります。不整脈がずっと続いているとは限らないからです。
病院に着いた時には不整脈が消えてしまい、通常の心電図では何も異常が見つからないことがあります。
では、心電図を長く記録すれば、失神の原因となる不整脈を見つけやすくなるのでしょうか。


14日間心電図をつけても、失神は減らなかった
最近、医学誌『New England Journal of Medicine』に、この疑問を検討した大規模な研究が報告されました。
英国45施設で、救急外来を受診しても原因が分からなかった失神患者2234人を対象に、早期から14日間心電図を記録するグループと、通常診療を行うグループとをランダムに分けて比較しました。
この研究が最も知りたかったのは、長時間心電図を行うことで、その後の失神を減らせるかということでした。
結果は「減らせなかった」でした。
1年間の失神回数は、14日間心電図を行ったグループで1.37回、通常診療では1.58回で、統計学的な差は認められませんでした。
ところが、不整脈はずっと多く見つかった
一方で、別の結果を見ると興味深いことが分かります。
長時間心電図を早期に行うことで、重要な不整脈は約2.5倍の患者さんから見つかりました。
しかも、見つかったのは単なる「脈の乱れ」だけではありません。
心臓が異常に速く脈打つ不整脈や、逆に脈が極端に遅くなる不整脈、6秒以上にわたって心臓の拍動が止まるような状態など、失神の原因となり得る重要な異常も含まれていました。
つまり、心電図を長く記録することで、それまで見えていなかった不整脈が見つかり、実際の治療につながったわけです。
では、どのくらい長く記録すればよいのでしょうか?
ここで、私が特に興味深いと思ったデータがあります。
14日間心電図で臨床的に重要な不整脈が検出された患者さんのうち、71.6%は最初の7日間で見つかっていました。
重要な不整脈が見つかるまでに必要だったモニタリング期間も平均5.4日でした。
研究に参加して14日間心電図を行うことになった患者さん全体で考えても、最初の7日間で重要な不整脈が見つかったのは約12%、およそ9人に1人になります。
もちろん、この研究は「7日間心電図」と「24時間心電図」を直接比較した研究ではありません。
また、14日間の記録で見つかった重要な不整脈のうち、残りの28.4%は8~14日目に見つかっています。
したがって、「1週間記録すれば十分」と証明されたわけではありません。
それでも、失神の原因を探すために心電図を記録するのであれば、24時間だけでなく、1週間程度記録することには十分な意味がありそうだと考えさせる結果です。
「心電図は正常でした」で終わらせない
失神の原因は不整脈だけではありません。
血圧低下や反射性失神など、さまざまな原因があります。
また、心疾患がある方、運動中に失神した方などでは、ホルター心電図だけではなく、より迅速な精査が必要になる場合もあります。


一方で、「失神したけれど、病院で心電図をとった時には正常だった」というだけでは、不整脈を完全に否定することはできません。
通常の心電図が見ているのは、その時の心臓だけです。
不整脈を疑うのであれば、「どれだけ長く心臓を見るか」も重要になります。
東京ハートリズムクリニック新宿では、失神、原因不明のふらつき、動悸などに対して、通常の心電図や24時間ホルター心電図だけでなく、必要に応じて1週間の長時間心電図検査を行っています。
「一度失神したけれど、検査では異常なしと言われた」そんな場合にも、一度ご相談ください。
引用文献
Reed MJ, Goodacre S, Weir CJ, et al.; ASPIRED Investigators. Immediate Ambulatory Electrocardiographic Monitoring in Syncope. N Engl J Med. Published online August 31, 2026. doi:10.1056/NEJMoa2605812.

