―「きっかけ」と「土台」で考える心房細動―
これまでのブログでは、運動や体重といった生活習慣が、不整脈と深く関係していることをお話ししてきました。
今回は、不整脈の中でも特に多く、脳梗塞とも関係の深い心房細動について、「なぜ起こるのか」をできるだけ分かりやすく解説します。
心房細動は、ある日突然起こるように見えて、実は
「起こるきっかけ」と「起こりやすい状態(下地)」
が重なって生じる不整脈です。
多くの心房細動は「肺静脈」から始まる
心房細動の約90%は、肺静脈と呼ばれる血管の入り口付近から始まることが分かっています。
肺静脈は、肺で酸素を受け取った血液を左心房に戻す通り道です。
この部分で、時々「余計な電気信号」が出てしまうことがあります。
この異常な電気信号が、心房細動を引き起こす引き金になります。そのため、発作性(出たり止まったりする)心房細動では、肺静脈を電気的に遮断するカテーテルアブレーションによって、高い確率で症状を抑えることができます。
なぜ肺静脈は不整脈が起こりやすいのか
肺静脈が特別な場所である理由には、体の「成り立ち」が関係しています。
心臓は内胚葉、肺は中胚葉という、もともと異なる組織から作られています。左心房と肺静脈は、その異なる組織同士がつながる場所にあたります。
言い換えれば、肺静脈は構造的に少し不安定な「境界領域」です。
東京科学大学の古川先生も指摘されているように、「つなぎ目はトラブルが起こりやすい」というのは、生物学的にも自然なことなのです(#1)。
このような背景があるため、肺静脈では異常な電気信号が生じやすく、心房細動のきっかけになりやすいと考えられています。

長く続くと、心房そのものが変わってくる
心房細動が何年も続くと、心房の筋肉そのものが少しずつ変化してきます。
すると、肺静脈という「きっかけ」だけでなく、心房の中に不整脈が起こりやすい土台(基質)が形成され、そこで電気がぐるぐる回り続けるようになり、心房細動が止まりにくくなります。
この段階では、「最初はきっかけの病気 → 進むと心房自体の病気」という性格に変わってきます。
そのため、心房細動は早めに対処することがとても大切なのです。
遺伝より大切なのは、生活習慣と持病
「心房細動は遺伝しますか?」と聞かれることがあります。
確かに遺伝子の個人差はありますが、それだけで心房細動になるかどうかが決まるわけではありません。
実際に重要なのは
- 高血圧
- 睡眠時無呼吸症候群
- 肥満
- 運動不足
といった生活習慣や持病です。
これらを放置すると、心房細動は起こりやすく、そして治りにくくなります。

心房細動は「防ぐこと」「進ませないこと」ができる
心房細動は、避けられない病気ではありません。
生活習慣を整え、必要な治療を受けることで、発症を防ぎ、進行を遅らせることができます。
そして、薬やカテーテルアブレーションといった治療法もあります。
次回は、心房細動がなぜ脳梗塞につながるのか、そして「症状がなくても治療が必要な理由」について解説します
参考文献
- 古川哲史著 そうだったのか! 臨床に役立つ心臓の発生・再生 メディカルサイエンスインターナショナル

